崇敬祭4
崇敬祭4の(自分が担当した分だけ)内容紹介。
(ネームより抜粋)
香霖堂の午後の店内では、今日も読書にふける霖之助の姿があった。
カランカランーー。扉の開く音。霖之助は視線だけ音の方、入り口に目をやる。
そこに現れたのは霊夢だった。
香霖「いらっしゃ…なんだ、霊夢か」
霊夢「なんだなんて失礼ね、霖之助さん。そんな接客じゃ商人失格よ」
香霖「お客様に接するから『接客』というんだ。君はお客じゃないだろう?」
霊夢「あら、それはわからないわよ。何か気に入ったものがあれば買うかもしれないじゃない」
香霖「霊夢がまともにお金を払う所を、僕は見た事がない」
霊夢「じゃあきっと、今まで気に入ったものが無かったのね。…あ、そうそう借りていた本返そうと思って」
霊夢が本を差し出す。
霊夢「…何を読んでいたの?」
香霖「これだよ」
霊夢は本を手に取ると店の中、商品の入った箱に座って読み始めた。
香霖「ここで読む気かい?」
霊夢「2巻を借りに来るのが面倒でしょう?」
香霖「まぁ…、静かに読んでいる分にはいいけど…」
霊夢は答えない。どうやらもう本に没頭しているようだ。
それから二人に会話はなく。静かに時間だけが進んでいった。
どれくらい時間がたっただろう。本を読み終え机に置く。
香霖「ふぅ…」
霊夢に目をやると先ほどと変わらない姿勢で没頭していた。
どうやら僕のオススメはアタリだったようだ。
ふと窓の方に目をうつす。黄昏時の時間――。
香霖「もうこんな時間か…」
黄昏時…か。
読み始めたときはまだ青かった空は、うっすらと闇を蓄えだし、オレンジ色のグラデーションを飾る。
いつのまに景色は様変わりしたのだろう。
そういえばまだ子供の頃、読書に熱中しすぎて、気づくと今ような黄昏時の景色をみた事があった。
読み始めた頃とは違った外の景色を見て、僕は不思議な感覚の中に居た。
ただ時間が経過しただけだ。そう頭でわかっていても、心はまだ半分本の世界から抜け出していない。
もしかしたら自分は本に熱中しすぎて、現実の世界から本の世界に入り込んでしまったのでは…?
僕の心は何故だかずごく心細くなっていった。
馬鹿らしい子供ならではの想像だ。しかし黄昏時は不思議な魔力を持っている。
黄昏時は人の心を惑わせ、その想像すらリアリティを持たせようとする効果があるからだ。
怖いような期待するような、そんな心が入り交じった不思議な時間だった。
いつしか薄暮の空は、景色の輪郭だけを映し出していた―。
(抜粋ここまで)
――と、いうわけでいつもと違ってとても真面目な、『東方香霖堂』をベースとしたパロディとなっています。
うちの普段の本を見ている方にはあまり需要があるとは思えませんが、今回は私と相方のコンビで1本づつ描いております。
サークル名義も相方の『ラナン・シー』となっております。
表紙。
戻る